「これまでのアタリマエ」が最善とは限らない
「今の業務部署(センター)をもっと効率化してよ」
「コールセンターの応答率・品質をもっと上げて」
こんな漠然としたお題を出されて頭を悩ませている業務責任者の方は非常に沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
「そうは言われてもメンバーはみんな一生懸命頑張ってるし…。」
「今まで改善に改善を重ねてきたから、これ以上は…。」
そんなとき、あなたはどうしますか?
まずは、一度立ち止まって、冷静に、ゼロベースで現状を客観的に分析してみてください。
■コールセンターの責任者の方
今、マネジメントしているコールセンターの「ありたい姿(目指す姿)」を書き出してみてください。正解はありませんし、そんなにガチガチに書く必要もありません。まずは、あなたが目指したいコールセンター像を言葉にすることが大切です。
例えば、
「応答率を98%まで上げて、且つ、品質の高いコールセンターにしたい!」
といったもので結構です。
では、次にそこを目指すための現状とのギャップを洗い出していきましょう。
・現状の平均応答率は73%→25%のギャップをどうやって埋めていくのか。
・「品質の高い」とは、具体的にどういう状態なのか。例えば「クレームの少ない状態」→では、現在のクレームの発生率はどれくらいで、何が要因となっていて、発生率がいくらに減ればOKなのか。もしくは、現状の一次対応完了率(ワンストップ・オペレーション=エスカレーションしない)がどれくらいで、どこまでを目指すのか。
それぞれの目指す姿とギャップを書き出していくと、何が原因でそのギャップが生まれているかが可視化されていきます。そうすると、目指す姿を実現するための課題が具体的にリストアップ出来ますので、解決するための手段と優先度を整理していきましょう。決して、一朝一夕に、一気に纏めて解決できるような簡単なことではありませんので、ゴールに向けたステップとマイルストーンを明確にし、経営層とも目線あわせをしたうえで、着実に実行していきましょう。当然のことですが、PDCAをしっかり回すことが重要です。各課題解決の進捗は予定通りに進んでいるのか、進めていくうちに必ず当初の予定から追加・変更しなければならない事象は発生しますので、その都度、フレキシブルに計画変更・軌道修正を行いながら確実にステップアップしていきましょう。
■業務センターの責任者の方
コールセンターと同じく、まずは「ありたい姿(目指す姿)」を書いてみましょう。
例えば、
「ミスをしない効率的で生産性の高い業務センターにする」
業務センターの責任者の方は、必ずといっていいほど「ミス発生」に頭を悩ませていると思います。
・FAXの誤送信
・宛名ミスによる誤配送
・個人情報漏洩
・登録ミスによるクレーム
・金額の誤案内による顧客トラブル
など、非常に多くの運用リスクの中で多大な精神的ストレスを抱えているのではないでしょうか。
ひとつひとつの課題をクリアするためには、どういった打ち手が必要なのか。また、その打ち手は人の力で解決するのか、もしくはシステム(テクノロジー)の力を借りて解決るするのか。なるべく多くの選択肢を最初に出して、それぞれのメリット・デメリットを明確にしたうえで、最適な手段を選択してください。例えば、「システムなんて導入する余裕はないよ…。」といって、人による解決策に早々に絞り込むケースが多いと思いますが、現在はテクノロジーも進化して安価になっているツールも多いので、きちんと調査し、比較検討することをお勧めします。人で対応することで、かえって人件費の方が高くなるといったことも起こり得ますし、システムによってミス発生リスクを減少させることで、コスト安となることもあり得ます。
■「アタリマエ」の見直し
「ありたい姿(目指す姿)」を書いて、そこに向けてのギャップ・現状の課題の洗い出しをおこなうと、現状の「アタリマエ」が「アタリマエではなかった」ことに気づかされると思います。
業務改善のポイントは、課題を細分化し、明確に特定していくことです。そうすることで、目指す姿にむけてのステップも明確になり、解決のための打ち手(手段)も具体的に設定することができます。今までの「アタリマエ」を見直すことで、着実に前進します。ただ、現状の「アタリマエ」を変更することにはかなりのパワーを割くのも事実です。それは、今までの「アタリマエ」運用に慣れてしまって、その今までのアタリマエを磨きつくしたメンバーにとって、現行運用を変更することは理解に苦しむ出来事だからです。しかも、運用変更することで改善する見立ては出来たとしても、100%改善するとは言い切れない(やってみないと分からない)ケースが殆どだと思います。そういったときは、メンバーからは賛同されるよりも抵抗を受ける方が多いと思います。でも、だからと言って諦めて何もしなければ、何も改善しません。改善しないということは「ありたい姿(目指す姿)」に一歩も近づけないということです。
以前、こういった経験があります。
コールセンターの責任者をしていた頃。当時は多いときは1日1,000件超のお電話を受けており、お客様からのお電話の記録は受電票という紙に記入して、且つ、ホストコンピューターにも登録していました。特にお金の支払いの受付ということもあり、ホストコンピューターへの登録内容を精査するためにも受電票が必要でした。すごく優秀な電話オペレーターは電話対応をしながら、受電票を起こして、入電が落ち着いた時間帯に一気にホストコンピューターに登録するので、受電が少ないオペレーターと比べると1日で2倍以上の入電対応をしてくれていました。その受電票(紙)に慣れて使いこなしていたオペレーターにとっては、それが最も効率的な「アタリマエ」なのです。そんな環境下で受電票を「紙」から「システム」に変更するといったプロジェクトを開始しました。システムをリリースした時は、多くのオペレーターから相当の抵抗と批判を受けました。それは、今まで使い慣れた「紙」から全く新しい「システム登録」となったことで、慣れない運用、且つ、これまで通りの受電を受付・対応しなければならないからです。
ただ、人間の素晴らしい点は、新しいシステムにすぐに順応するということです。1週間もかからず、早い人は数日でそのシステムに慣れます。結果的に、切電後の後処理時間は大幅に減り、一人当たりの平均受電件数も伸び、コールセンターの生産性は大きく改善しました。運用改善を自分たちの肌で感じられることで、当初新運用に批判的だったオペレーターもシステムに慣れると今度はそれが「アタリマエ」に変わり、新運用に賛同してくれます。このプロジェクトでは定量的な改善が見えたので、メンバーからも早々に賛同されましたが、すべてがうまくいくとは限りません。成功させるためには、PDCAをしっかり回すことが重要です。実行(Do)した後、きちんと検証(Check)して、うまくいっていないのであれば、原因を追究し、再度仮説を立てて、改善策を立て(Action)変更案を計画(Plan)したうえで、実行(Do)し、それについての検証(Check)を繰り返す。改善成功の鍵は「ありたい姿(目指す姿)」に向けてのPDCAを繰り返すことです。一度でうまくいかなくても、諦めずにやり続けてください。
もし、業務改善でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
これまでの経験から貴社のお役にたてること出来れば幸いです。